宇宙と宇宙をつなぐ数学

Twitterで見かけたので買ってみた。

数日かけて読了。

 

宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃

宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃

 

 

原論文を見た(≠読んだ)人はわかるだろうが、ページ数だけで大部であり、かつ内容的にも読み下すのは(私には)不可能。という感想を数年前に持っていた。

それでも、本書を読み進めていくうちに「ちょっと読みに行ってみようかな」と思わせるくらいにわかりやすく書かれていた。(そして、さっきちょっと読みに行ったらまた打ちのめされた。たぶん、扱っている題材自体の基礎知識が足りない。)

理論のアイディア自体は(記述されている範囲内では)明快で、数学を専攻していた私にとっては素直な感じに受け止められた。だからだろうか、むしろ説明の前段部分がちょっと冗長に感じられたが、それは私がこの本の想定読者像からちょっとずれたところに立っているのだろう。

著者の主眼だったかどうかわからないが、第2章の「数学者の仕事」もよくまとまっていたように感じた。自分の周りに数学者がいて何を考えているかわからない!という人は、ここまででも読んでみてはどうだろうか。(そして気が向いたら、続きを読んでみてももちろんよい。)

年次大会2日目

あれもやらなきゃこれもやらなきゃと気が急いた日。

キーワード、というか聞いていて思ったことも含む。

  • 英語のセッションのリスニングはかなり厳しかった。
  • 面白がって学ぶことが大事
  • ダイバーシティは男女に限らず、異なるバックグラウンドを持つ人々全般に対する概念なのだろう。
  • slidoは面白い仕組み。日本語のセッションでも導入したら質問しやすくなるかも?
  • ロバスト性(実績データの増減が推定に与える影響は?)
  • AIC
  • 予防的切除
    • 有名人の行動で大衆の行動が変わりうる。
  • ゲノム情報の活用とオーダーメード医療
  • がん遺伝子パネル検査
    • 自分の遺伝情報(の一部)を知る消費者が保険を買う時代
  • がん診断の早期化、生存率・生存期間の向上
  • リキッドバイオプシー がん特有の遺伝子の断片を調べる。
  • ストレステスト
    • 公理的に展開される「あるべき姿」はない。
    • 当初の目的・限界が忘れられたまま使われてしまうことも。
  • ストレステストもそのうち形骸化してしまうのでは?
    • ストレステストは自動車の計器に過ぎない。運転はしてくれない。
    • ツールが増えてしまうのはよくあることだが、それ自体が目的化しない努力が必要。それには(経営陣に)常に問い掛け、対話すること。
  • ORSA:取ってるリスクを考えるのは当たり前。強制されるがゆえに形式化するのでは?
    • 規制当局のやりたいことが起点。SMR以外のツールが欲しいと考えるのは自然。
    • 会社としては大きなお世話かもしれないが、できてしまったものはしょうがないので、経営にうまく活用した方が得策。
      • 組織としての自己規律を高めるとか
      • 当局に自分達の考えを伝えるツールと考えるとか(要点は絞るべき)
  • アクションに繋がらないなど、リスク管理は経営にうまく活用できているのか?そのためには?
    • ルールを決めておくこと。例えば経営会議で議論するトリガー。
    • リスクガバナンス
    • アラームの有効性・適切性をきちんと考える。狼少年はだめ。
    • 過去の事例をみると、「ガバナンスの欠如」が原因の破綻が多い
    • リスク管理リスク管理部門の仕事」から「企業価値向上(のためのERM)は経営の仕事」へ
      • マインドは良い方向に変わっては来ているはす。
  • 健全な懐疑心(常識)
  • ↑経験が裏打ち
      • 歴史に学ぶ
      • 賢者に学ぶ(違う見方の人を複数)
      • 友に学ぶ(横を向く)
  • リスク管理はシナリオを考えること
  • 本当に大事な時はNo
  • 業務を理解する
    • 議事録は自分のために役立つ
  • 時系列解析
  • Kaggle

年次大会1日目

3年振りにゆっくり聴けた。

キーワード、というか聞いていて思ったことも含む。

  • IFRS17(IASB)
  • ISAP4(IAA)
  • ICS Ver.2.0(IAIS)
  • 顧客本位の業務運営
  • とりまく環境の変化への対応
    • リスク管理体勢の整備
    • ERMの重要性
    • 経済価値ベースの考え方
      • 動的な監督
      • 経済価値ベースのソルベンシー規制
      • 様々な影響踏まえ検討
      • ICS に遅れないタイミングで導入したい
  • 持続可能なビジネスモデル
    • 全体的にはそうではない
    • 生産年齢人口の減少
    • 新たな保険ニーズの出現
  • Create a brighter future
  • デジタルエコノミー第2回戦
    • 金融商品、自動運転、遠隔医療
    • キーワードは信頼性
  • ICS 積極的な意見発信
  • 国際的なプレゼンス向上目指す
  • グローバルかつフォワードルッキングな視点
  • Society5.0
  • ICA2026
    • 会員のサポートが必要
    • 国際大会の参加者はネイティブとは限らない
      • いろんな発音の英語
      • 共通するのは、よく話す
    • 身近で参加できる良い機会
    • アクチュアリーは全世界で10万人
  • 過去の少子化のツケを払うフェイズ
  • 出生数からすると人口減少は不可避と考えるべき
    • 〜2042 高齢者は増加
    • 2042〜 高齢者も増加
  • 今後の高齢社会の特徴
      • 80代以上が増加
    • 女性高齢者が増加
    • 一人暮らしが増加
    • 貧困層が増加 非正規雇用者の高齢化
  • 社会課題に向き合う必要
  • 社会インフラの支え手不足
  • 医者、ドライバー、自治体職員
  • 終身雇用の崩壊
      • 若いうちにキャリアアップに自己投資
      • 変わらざるを得ない
  • 逆転の発想
    • あるものでできることをやる
  • 人手不足→無駄な仕事を減らすべき
  • B/C Benefit/Cost
  • アドリブとユーモア

徒然

任天堂社長にしてゲーム開発者でゲーマー。
彼の訃報を知って、ここ数日悲しい気分。いや無論、四六時中ではないけれど。
世界中で彼を悼む記事が上がってて、つまみ読みしているんだけれど、誰かエピソードをまとめてくれないかな。

  • ほぼ日

http://www.1101.com/home.html

岩田氏の訃報で以下のまとめが作られたので再読している。
http://www.1101.com/iwata20150711/index.html

休憩に又吉-the芥川賞作家-の対談を読む。
http://www.1101.com/matayoshi/index.html
ちょっと読んでみようかなという気持ちになった。

金融リスクを変えた10大事件

金融リスク管理を変えた10大事件

金融リスク管理を変えた10大事件

アクチュアリー会の年次大会で紹介されていた本。
過去の危機を目の当たりにしていない人にとってさらっとおさらいするのにいい本らしかったので買ってみた。
前半部分は本当に知らなかったので、ふんふんと読んでいたが、バーゼルⅡあたりは若干目が滑っていって…残念ながらここはさらっとなってなかった。それだけ重いってことなのだろう。

でもおおむね読みやすかった。真ん中の第5章がLTCMなのだが、これをよく知らない若い人(自分含む)は読んでみると歴史の勉強になっていいかもしれない。

アルキメデスコピュラの名前の由来(続)

5/4の記事の続き。

大学図書館に行って前述の本にあたってみた。

Among the most important results in PM spaces - for the statisticians - is the class of Archimedian t-norms, that t-norms T that satisfy [tex:T(u,u)Archimedean copulas.

Nelsen, R. B. (2006). An Introduction to Copulas, 2nd ed., Springer-
Verlag, New York.
1. Introduction

まず、アルキメデスコピュラはPM(probabilistic matric) spaceの分野からきている。確率分布の空間の中に距離を入れて研究したいという人たち。
でもなんでその式でアルキメデスなのかよくわからない。

ちなみにt-normというのは以下の通りで、一般の意味での距離に近いような、そうでないような。

t-norm (triangular norm) - A function T : [0,1] × [0,1] → [0,1] that satisfies

  • T(a,b) = T(b,a)
  • T(a,b) \leq T(c,d) whenever a \leq c, b \leq d
  • T(a,1) = a for all a in [0,1]
  • T(T(a,b),c) = T(a,T(b,c)) for all a, b, c in [0,1]

Schweizer, B. and Sklar, A. (1983). Probabilistic Metric Spaces, North-
Holland, New York [Reprint (2005), Dover Publications]. より要約。

Nelsenの方の本をめくってみるとわかった。(4.3節より)

By now the reader is surely wondering about the meaning of the term "Archimedean" for these copulas. Recall the Archimedean axiom for the positive real numbers: If a, b are positive real numbers, then there exists an integer n such that na>b.

どうもアルキメデスの公理と関係しているようだ。
正実数a,bについて、aをとある自然数倍すればbより大きくできる。という話。

An Archimedean copulas behaves like a binary operation on interval I, in that the copula C assigns to each pair u, v in I a number C(u, v). From Theorem 4.1.5, we see that the "operation" C is commutative and associative, and preserves order as a consequence of (2.2.5), i.e., u_1 \leq u_2 and v_1 \leq v_2 implies C(u_1, v_1) \leq C(u_2, v_2) (algebraist call (I,C) an ordered Abelian semi-group).

アルキメデスコピュラは[0,1]区間の2項演算とも見れる。しかも性質が足し算に似ていて、順序を保つ(順序付き可換半群)。
証明に興味のある人は引用元の本を参照してください。
ちなみに(2.2.5)というのはFrechet-Hoeffdingの限界と呼ばれる不等式。

For any u in I we can define the C-powers u^n_C of u recursively: u^1_C =u, and u^{n+1}_C = C(u,u^n_C) [note that u^2_C belongs to the diagonal section \delta_C(u)ofC].

足し算に似ているんだから、自然数倍のアナロジーも考えられるでしょうという発想。数学ではよくあること。
そもそも掛け算は足し算からの流れで理解されている。
たとえばaの4倍というのはa+a+a+aのことであって、わざと関数っぽく書けばPlus(a, Plus(a, Plus(a, a)))となる。

The version of Archimedean axiom for (I,C) is, For any two numbers u, v in (0,1), there exists a positive integer n such that [tex:u^n_C

“コピュラ的自然数倍”を上のように定義すると、元祖アルキメデスの公理と同様の性質が成り立つということがいえる。
引用元の本ではこのあと証明が書いてあるが、定義からそんなに問題なく導ける。
それならたしかにアルキメデスと名前を付けてもいい。

まとめると、「アルキメデスコピュラ」の名前の由来はアルキメデスの公理、ということでした。