新年度ということで心機一転、アクチュアリー関係の活動記録をつけてみることにします。
ブログへの記載は毎日にならないかもしれませんが、手帳にはメモしておくようにしたいと思っています。(そうしないと続かなそうだから。)

  • 新しいバインダーを購入(勉強用)

新しい文具を買うのはモチベーション的にはプラス。買うだけで満足しないようにすること。

3.11で中断したJARIPの号。監督指針、検査マニュアルももう少し読み込まないと。
東京海上の保険負債時価評価システムに少し興味。

  • 「なぜ金融リスクはうまくいかないのか」Pxx〜P80

借り物。貸してくれた方のコメントどおり、まわりくどくて読むのに苦労している。(訳者の問題?)ただ、示唆するところはつかみたいのでがんばって読んでいる。

この一冊ですべてわかる 会計の基本

会計の基本

会計の基本

s_iwkさんのブログにて紹介されていたので試しに読んでみた。
http://iwk.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/1-1914.html

全体を通して、非経理部門or非専門家といった視点からのありがちな疑問を提示し、それに応える形をとっており、読みやすかった。
本書の最初に書いてある「本書の利用法」において、「会計の要点を、手早く、簡単に、身につけたい」人がターゲットとあったが、それが題目だけではないという感じ。
総じてすっきりまとまっているので、すでに知っている事項についても読む価値はあり。

個人的に本書で理解が進んだと思ったのは内部統制の章と、予算管理やコストマネジメントの章。
内部統制に関しては正直なところ、まぁなんか書類を整備しないといけないんだな的な理解でしかなかったのだが、何を狙っているのかがわかった感がした。
予算管理は今やっている仕事の一部に近い(そうは言っても体系立てて学んでいるとは言いがたい)章なので、知っていることの整理にちょうど良かった。
コストマネジメントは製造業の例で書かれてはいるものの、保険でも考え方は同じなので、個人的には生保2の第5章を読む前の人にお勧めしてみたい。特にそういう業務をしたことがない人にはよいのかも。

なお、本書の表紙にも書いてある「会計ブロック」に関しては確かにわかりやすかったが、自分はすでに「わかっている」状態なので、それこそ入社一年目とかの人に勧めて感想を聞きたい。

終了

今年度の試験が全日程終了しました。
2次試験(生保)について、雑感など書いてみます。
特定できるようなレベルでは書かないつもり。

生保1
問題1(20点)
(1)局面転換対数正規モデル(RSLN2)(計算)
(2)個人保険で年齢性別によらず危険発生率を一律に設定する場合の問題点と容認されうる状況
(3)米国の就業不能所得補償保険退職者の給付にあたっての課題
(4)(ア)プロフィットマージンから営業保険料を逆算(計算)
   (イ)(ア)で前提を変更したときの変化(グラフから選択し、理由を述べる)
→(1)ははまりそうなので飛ばしたのでよくわかりません。
(2)は多少ひねっている気もしましたが、教科書で対応できるレベルかとも思われました。
(3)は意外な感じがありましたが、第4章(新商品)からの出題。記憶にあったので概ね書けた感じ。
(4)は計算はともかく、(イ)が見た目以上にやっかいで、ここで時間をやや使いすぎた感があります。
⇒良くて10〜12点?

問題2(40点)
(1)設立後間もない会社で保障性商品が販売好調。共同再保に出再割合80%で出再している。
①目的は?②出再割合を50%に引き下げることを検討している。メリデメは?
(2)変額年金の最低保証。「経済価値のヘッジ」「会計価値のヘッジ」の概要。両者の違いを踏まえて。
(3)①V>Sとなる例2つ ② U>Sとなる場合の解約を認めた場合の問題点 ③②を防ぐための方法3つ(留意点つき)
(4)団体保険における経験料率について説明し、無配当団体生命保険を経験料率法で設定するときの留意点
→(1)教科書で前半は書けるとして、後半に関してはデメリットは①の裏返し。メリットは?という話になるかと。
(2)概ね書けた気がしていましたが、後から考えると各論に突っ込んでしまった気がしてややマイナス。もう少しうまくまとめたほうが良かった。
(3)これは教科書。でもちょっと抜けがあったので厳しい。
(4)配当清算法の説明まで求められているのかちょっとよくわからなかったのですが、結局書かず。
⇒4割〜6割といったところ?

問題3(40点)
(1)医療保険。無解約返戻金商品をすでに販売中。保有契約・収益機会拡大のために選択基準を緩和/厳格化した商品を検討。導入するべきか?
(2)アキュムレーション方式・経済価値ベースでの料率設定(定期付終身)留意点、論点等について。
→(1)を選択したことだけ述べてあとは割愛。
どちらか1商品でなく、2商品並列で論じなければならないところが書きづらかった。
⇒不明

生保2
問題1(20点)
(1)第3分野のストレステスト(穴埋め)
(2)変額年金の最低保証V評価用の解約率(監督指針)(穴埋め)
(3)生命保険会社税制(穴埋め)
(4)損益計算書等から利源分析の各利源の損益(計算)
→(1)(2)はオーソドックスでした。一点気がかりな点があるとすれば、細かい表現まで監督指針に一致させなければならないかどうかくらい。
監督指針と教科書も微妙に表現異なるので、まぁいいかなとは思っていますが。
(3)は意外でしたが、事前に教科書を見ていたので概ねよし。
(4)は実務で利源分析やっていれば問題ないレベルですが、やったことがないといろいろずれそうな感じ。生命保険契約者保護機構負担金とか。
⇒9割前後?

問題2(40点)
(1)区分経理の意義および商品区分の設定(監督指針・検査マニュアルを踏まえ)
(2)「蔵銀枠」「利源枠」「純保枠」考え方、事業費統制の基準として採用する際のメリデメ
(3)実務基準における公正・衡平な配当、確認の概要
(4)長短金利上昇かつ一定期間継続局面を想定した場合の、収益、リスク管理面からの検討課題
→(1)は監督指針の押さえが甘くてうろ覚えだったのがやや×。
(2)(3)は教科書を押さえておくことで対応できるように思われます。
(4)はややひねっている気もしましたが、勉強していればある程度書けるところとも思われました。
⇒7割前後?

問題3(40点)
(1)ソルベンシー・マージン比率(新基準)を向上させるための方策・留意点
(2)経済価値ベースの保険負債を含む会計制度が導入された場合の、健全性確保、比較可能性、会社の収益・リスク管理のあり方その他の検討課題について
→(1)を選択したことだけ述べてあとは割愛。
ソルベンシー・マージンは準備してきた人が多いと思うので、(1)を解く人が多そうだなと思いました。
⇒不明

生保2はいけるといいなと思っている感じです。足切りされるようなレベルではないと思っているのですがー。
生保1は所見で6割くらい必要な計算なので、ちょっとつらいかと。

概ね力は出し切ったといえると思います。精進あるのみ。

あと40日

アクチュアリー会年次大会に行ってきました。
個々の感想は書いている暇がないので割愛ですが、代わりに最近感じていることを。


2次試験の過去問を眺めていると、昔は穴埋め問題が多かったなぁと感じます。個人的にはそういう問題は得意なので、「この時代に受けていれば…」と思ったりもしますが、それはさておき。

最近の傾向として、説明させる問題が増えた気がします。
いろんな概念単語を必要十分に自分の言葉でまとめる。
今日の発表でもそうでしたが、ERMのいろんなワードをもし社長とかに聞かれたら、説明として必要十分なのはたぶん最大2-3行程度。それでもし興味を持って突っ込んできたらプラス5行とか。CERAの資格はそれがたぶんに意識されてる気がした。

もう一点、論述についてあれこれ考えをめぐらせていると、「これってなんだっけ」「これってなんのためだっけ」「こういうときはどうするの」と、いちいち自分に突っ込み入れる考え方が必要だなぁと感じる次第です。自分で入れた突っ込みに反応していくことで自分の中の議論が成長していけばいいのではないのかなぁと。

たとえば、両論あってどっちにもメリットデメリットあって、みたいな問題についていえば、実務においては最後にはえいやっと飛ぶ場面が必要になるわけで、そのときに必要な態度は「できるだけ広い視点で考えてメリデメ把握しました、論理的には回答一意ではないですが、わたしはこういう理由でここを重視して、こっちを選ぶことにします」なのだと思ったり。(もちろん、実務においては判断は上位層や経営陣が行う必要があって、判断させてもらえないこともあるけど。でも自分の意見は持つべきだし言うべきだと思う。)

つらつら書きましたが、誰かの勉強の一助になれば幸い。

人はなぜ逃げおくれるのか

植村氏のブログを読んでの雑感
http://nuemura.com/item_1145.html

正常化バイアスに限らず、「まぁ大丈夫だろう」と思いたくなる、という罠は意外と多い。
災害の文脈だとパニックを恐れて、となるけれど、日常や企業の活動においてはいろいろな面倒ごとや、批判や、なんやかやを恐れて、そう思いたくなる。
そのほうが、精神的に楽だとか、そういう理由なんだろう。

そういえば、植村氏の少し前のエントリーで紹介されていた、「なぜリーダーは「失敗」を認められないのか」も、そういった失敗事例集だった。この本は実際に買って読んだところ、素直におすすめできる良書だった。
完全に推測だが、今回のエントリーと併せて考えると、現在FSAにいらっしゃる植村氏のある種の問題意識が表れているような気がした。

なぜリーダーは「失敗」を認められないのか―現実に向き合うための8の教訓

なぜリーダーは「失敗」を認められないのか―現実に向き合うための8の教訓

今回原発の一件も、途中に「まぁ大丈夫だろう」が挟まって事態が悪くなっているのが聞こえてきている。
「まぁ大丈夫だろう」が「大丈夫じゃなくなるとき」の影響というのは、それで引き伸ばしてきてしまった期間が長いほど甚大な影響があると思っていて、生保会社のアクチュアリー(の受験者)としてはまさに心しなければならない部分なのではないかと思うわけで。
金融の国際化・自由化の中でどんどん変化の潮流が加速している中で、たとえば、商品開発において、ある重要な変化を見逃して、「まぁ前回並みでこんなもんで大丈夫だろう」と基礎率を設定してしまったら。逆に、変化してるからしょうがないじゃん、と、基礎率をどんどん変えていってしまったら。
多分影響が出るのは10年とか、それ以上先の場合もあるはずで、しかもそれは突然やってくる場合もある。そんなことを考えてみると、上述の問題意識がなんとなく判ったような気になってくる。

震災と保険会社の財務

下記質問に対して@maisudaiさん(http://twitter.com/#!/maisudai)に書いてもらったhttp://maisu.blog.shinobi.jp/Entry/1001/ので、自分も書いてみる。

期末間近の震災に対して期末後に想定される支払い急増への財務的手当てについて損保の考え方を教えてください。

自分の知識の範囲・レベルで書いていますので、突っ込み大歓迎です。

1.資産面
保険金支払総額は業界全体で2,000億円規模(4/12付・生命保険協会長)とのこと。
この程度であれば普通に現預金の範囲内で十分対応可能というのが主見解です。生保協会月次統計(http://www.seiho.or.jp/data/statistics/monthly/index.html)によれば、1月末の現預金残高は3.5億円あり、1桁違うことがわかります。
なお、資金繰りでは、平時からこれだけは確保しておき、余剰分は運用にまわそうというラインがあります。これは各社各様だと思います。会社によっては効率的に運用しているためにもしかしたらその瞬間の現預金では足りないかもしれませんが、コールローンのような運用期間の短いものをまわしてくれば対応可能な範囲と考えます。さらにその間に収入保険料も入ってくるでしょう。

なお、生保は損保に比べて保険金請求のピークは時期的に後になると思います。
(保険の対象が、損保の場合は家屋等ですが、生保の場合は人の生命が主のため。)保険証券の紛失等も多いでしょうから、なおさらです。

2.負債面
支払額のうち、通常の予測の範囲である一定割合(これは商品や契約属性、期間によってまちまち。定期保険だと少なく、貯蓄性だと多め)が責任準備金としてすでに負債計上されています。
これを超える部分が実質的な支払時の負担になりますが、今回の地震に対応するものを負債として計上すべきかという議論については、企業会計原則注解18に、以下のような記載があります。

 将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰入れ、当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部又は資産の部に記載するものとする。 製品保証引当金、売上割戻引当金、返品調整引当金、賞与引当金、工事補償引当金、退職給与引当金、修繕引当金、特別修繕引当金、債務保証損失引当金、損害補償損失引当金、貸倒引当金等がこれに該当する。

 発生の可能性の低い偶発事象に係る費用又は損失については、引当金を計上することはできない。


今回の件に当てはめて考えると、
(1)将来の特定の費用又は損失(○=既請求ならば当然に当期の費用として計上。未請求ならばこれを満たす。)
(2)その発生が当期以前の事象に起因(○=これは議論なし)
(3)発生の可能性が高い(○=個別の契約については微妙ですが、契約者群団としてみれば十分に高い)
(4)その金額を合理的に見積もることが出来る(○=警察庁や報道情報と自社の契約データの照合+統計的な見積もりは可能)
というわけで、負債性引当金として計上する要件はみたしています。(実際に計上すべきかどうかは、重要性の原則等も加味して考える必要があります。)

実際に計上する場合、語感からはIBNR(既発生未報告備金)が思いつきます。これは、現金主義を発生主義に修正する支払備金勘定の正確からしてもよさそうです。ただ、これに関する法令は、過去3年度末の実績から当期末の実績を推測する手法が記載されており、今回の震災の影響は織り込めない形式です。(このあたり損保とは様相が異なるように思います。)さらに、「○○以上を積み立てなければならない」ではなく、「○○の金額を積み立てなければならない」であるので、実務上震災の影響を織り込もうにも各社ばらばらになるでしょうから、法令上の何らかの対応が望まれるでしょう。
IBNRを使わない場合、何を使うんでしょう…適切な勘定科目が思いつかないのですが、危険準備金Ⅰを多めに積むとか?(ただし、後述の議論もあり、筋が悪いです。)

また、これは当期ではないですが、来期末に用いる今期末のIBNR実績をそのまま使ってよいのかという部分も議論される余地があります。


さて、今回のような大災害に備えて、危険準備金I(保険リスクに備える危険準備金)を積み立てています。阪神大震災のときのクッションもここでした。
通常の予測を超える死亡が発生していると見込まれるので、取崩が必要と考えられるが、当期の死差損益はあまり悪化していないはずである(未報告の請求は計上されないため。この部分は1月に発生した阪神と異なる。上記IBNRでなんらか追加計上できていれば反映できる)ので、目的外取崩として各社必要に応じて届出の上取崩を行うのではないかと考えられます。
おそらくここはセットの議論であり、「将来の支払額の推定」→「対応する準備金の取崩」ということになるでしょう。ここをセットにしている限りにおいて、当期損益への影響は損保ほどではないように思います。

ちなみに来期への影響ですが、危険準備金Ⅰは、保険リスクの増加に対してその年度で一括で計上する形をとっており、積立基準∝リスク対象契約の増加、積立限度∝リスク対象契約の総額ですので、これを取崩した会社も来期の繰入負担はほぼ変化が無いです。ただし、会社判断で取崩分を平準的に回復しようという発想はあるはずなので、一定の影響はあると思われます。

地震2

関東圏の電力供給が逼迫しているため、地域を区切って順番に停電させる「輪番停電」を実施する可能性あり。
現時点では対象地区・時間帯の情報は無い。
※本件について東京電力を批判する意図は無いので念のため。

  • 名称

マグニチュードが9.0に修正されたからかどうかは不明だが、
東北関東大震災」という名称が報道機関で用いられ始めている。

  • 寄付

義捐金詐欺の懸念を考慮せねばならない。

  1. まっとうそうな団体名であっても収支は不明瞭である可能性
  2. 義捐金は復興のために継続的に必要であること

私は赤十字を利用しようと思う。まだ義捐金受付の準備は整っていないそうだが、上記2から全く問題は無いと考える。
http://www.jrc.or.jp/index.html

また、来年も確定申告を行うだろう人にアナウンスしておきたいのが、寄付金控除の存在。所得税・住民税*1の計算について、寄付金控除が受けられる。ただし、寄付先団体が何処でもいいと言うわけではないので、留意して欲しい。(わかりにくいが、これは上記1への対策の意味もあり、私は支持する。)

*1:これについては在住の地方自治体に確認を。